Introduction
テトラピロール分子の代謝を指標とした植物代謝システムの解析
植物における代表的なテトラピロール分子は、クロロフィルとヘムです。クロロフィルは葉緑素として、光合成の光エネルギーを受容し、そのエネルギーを伝達し、電気的なエネルギーに変換します。一方、ヘムはヘモグロビンの血色素として酸素運搬を行なったり、電子伝達系のシトクロムや酸化還元酵素の補酵素として、生体内で必須な役割を果たしています。
クロロフィルとヘムは共通の生合成経路から合成されます。ただ共鳴構造の発達したテトラピロールは、光照射により励起され、活性酸素を発生させるため、生体内に蓄えておいたりタンパク質と結合しない状態で存在する事が出来ません。従って、その生合成には厳密な制御が必要になります。実際、ヒトでもテトラピロール中間体を貯まるとポルフィリン症という病気になることが知られています。一方、クロロフィルは地球上に最も多く存在する有機金属化合物で、その生合成は盛んに行なわれています。厳密な制御と活発な生合成をどのようにコントロールしているのか、私たちの最初の疑問はそこから始まっています。