1. クロロフィル合成系の制御
研究テーマ
・クロロフィル合成系と光合成遺伝子の共発現による光化学系の構築
・光合成光化学系活性によるクロロフィル合成酵素の活性調節
植物のクロロフィル合成系遺伝子の発現様式をDNAアレイを作成して詳細に調べ、いくつかの鍵となる遺伝子が共発現することを見出しました。
さらにこれらのクロロフィル合成系の遺伝子は、核にコードされた光合成遺伝子とも共発現する事を見出しました。この結果は、クロロフィルを厳密に制御しながらも、タンパク質とともに大量に作り出している一つの重要なコントロールポイントだと考えられます。
この仕組みを明らかにするために、根が緑化する現象に着目しました。普段は緑色をしてない根が葉緑体を作る時には、関連する遺伝子を協調的に発現させると考えられます。実際、根におけるクロロフィルの合成が植物ホルモンにより調節されていることを見出しました。
実際、緑化した根では、私たちが注目したクロロフィル合成の鍵となる遺伝子の発現が予想通り上昇していました。そこで、その発現をコントロールしている因子(転写因子)の探索を行なっていきました。そうすると、光と植物ホルモンにより調節される2つの転写因子の存在が明らかになってきました。
その転写因子を調節すると、植物の根を顕著に緑色にすることが出来る事が分かりました。何と根で葉の10%近いクロロフィルを蓄積できる事ができました。
この緑化した根では、葉緑体が発達しているだけでなく、光合成活性(酸素発生、炭酸固定活性)を有している事が分かりました。何と、光合成する根を作る事が出来たのです。
この仕組みをさらに詳細に明らかにするとともに、農学的な応用に活かす可能性も考えています。今後、この研究が発展すれば、以下のような展望が開けると考えています。
展望
・光合成光化学系の構築の分子基盤の理解
・光合成組織への可塑的変換によるソース器官の形成
・光化学系の老化抑制による植物の常緑化